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大利根なみだ酒
作詞 松岡弘一 
作曲 水森英夫
山内惠介
(一)
昔ならした 千葉道場
出世夢見た 日もあるが
小舟浮かべた 大利根川に
こぼす涙を 誰が知ろ
よしきり笑って 月が哭(な)く

(二)
母も故郷も 忘れたが
なぜか涙が 止まりゃせぬ
嫁にいったか 妹二十歳(はたち)
どうか幸せ 祈りつつ
人斬り平手が 男哭き

「テンツクテンテン、テンツクテンテン……あれは
佐原囃子(さわらばやし)か、ふふ、ひとりぼっちの夏も終わり、
もうすぐ秋祭りだなぁ。魚も釣れず、やけに酸っぱいぜぇ、
今夜の酒は……よしきりよ、そんなにおかしいか。
じゃあ一緒に笑おうか、ふっはっはっははははは」

思い出すのはお玉が池の三本勝負、相手は旗本若様
腕自慢、一本ゆずるが武士の商法か。気がつきゃ
若様、白目をむいて倒れてやがった……破門だと。
なにをぬかしやがる。強くてなにが悪い。こんな算盤
道場、追い出される前にこっちから出ていってやらぁ
……門弟三千人の中でも一、二を競い、剣豪だ、
剣聖だ ともてはやされた平手造酒(みき)が、今じゃ酒代
ほしさにやくざの用心棒か。ふふ、よくぞ よくぞ
ここまで落ちぶれ果てたもんだぜ。

(挿入歌)
父の形見の 刀豆煙管(なたまめぎせる)
ぷかり吹かして 飲む酒は
剣を呑むよな 味がする
膝を抱えて うたたねすれば
月のしずくが 月のしずくが 頬濡らす

時は天保十五年八月六日。
秋風さわやか稲穂を揺さぶり渡る。
ところは下総(しもうさ)、利根川沿いで、竜虎相打つ侠客(おとこ)の喧嘩。
責めてくるのは飯岡助五郎、迎え撃つのは笹川繁蔵。
笹川食客(しょっかく)平手造酒(みき)、歳は三十、白皙(はくせき)美男。

「お世話になりもうした良庵(りょうあん)殿。これは 無聊(ぶりょう)の
手慰(てなぐさ)みに彫った御仏(みほとけ)でござる。薬代がわりに置いて
いきもうす。目障りだったら捨ててくだされ……いや、
止めてくださるな、この花咲かすには今しかないので
ござる。これは一世一代男の祭なのじゃ。さあ、そこを
どいてくだされ。どかぬならば神も仏も斬るつもりじゃ。
どけ!どいてくだされ!」

(三)
なんの因果か 笹川に
草鞋脱いだら 義理からむ
一宿一飯 預けた命
咲かぬ花なら 斬り開き
大利根真っ赤に 染めようぞ

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